明顕山 祐天寺

更新日: 2021年9月2日   公開日:2021年9月1日  

「たいせつなことは、目に見えない」

法務部 竹村崇邦

5月2日、国際宇宙ステーションでの165日間の長期滞在ミッションを終えて、日本人宇宙飛行士・野口聡一さんが地球に無事帰還しました。今回のミッションで画期的だったのはスペースX社という民間企業が宇宙飛行士の輸送を担ったことです。また7月には、米ヴァージン・ギャラクティック社と米ブルーオリジン社が民間人を乗せた有人宇宙飛行を成功させており、まさに「宇宙旅行元年」の様相を呈しております。このような民間企業による宇宙開発レースは、地球での移動手段にも革命をもたらそうとしており、将来的には世界中のあらゆる場所を1時間以内で移動できるような計画がなされているようです。

科学の合理的な物の見方は、とても有難いもので、そうした物の見方の積み重ねによって、私たちがより豊かな生活を享受できるようになっております。その一方、現代社会は目に見えるものばかりを追い求めて、結果として「目に見えない」ものは信じなくて良いという風潮があります。

仏さま、ご先祖さま、ご供養、ご縁、死後の世界、死者への悼み・・・

仏教が説く多くのものは、「目に見えない」ものばかりです。

浄土宗のお念仏の教えは、南無阿弥陀仏とお念仏を称えた者を、一切の苦しみのない極楽浄土に必ず救うぞという阿弥陀さまの大いなる慈しみのお誓いに全てを委ね、お念仏の日暮らしを送ってまいりましょう、というものです。南無阿弥陀仏とお念仏を称えたならば、この命が尽きた時には必ず阿弥陀さまが極楽浄土へお救いくださる。極楽浄土には先立たれた大切な方々がいらっしゃり、再会させていただくことができる。阿弥陀さまも極楽浄土も「目に見えない」が、大切なものです。

この世は、どれほど楽しいことがあっても、求めても得られない、思い通りにならない、老いに憂い、病気に苦しみ、そして死の恐怖に苛まれながら生きていかなければならない、苦しみに満ちあふれた世界です。

仏教をひらかれたお釈迦さまは、「人として生を受けたことを喜びなさい」とお説きになりました。なぜなら、この苦しみの世に生まれ、今を生きているからこそ仏教ひいてはお念仏の教えに出会うことができるのであり、お念仏のみ教えに出会うことによって苦しみを乗り越える道を知ることができるからです。

つらく苦しいこの世にあっても、お念仏の教えを信じ実践することは、この苦しみの世を生きぬく力となります。

仏教は、「目に見えない」ものです。しかし、この世のありようをしっかりと見据え、自身の命をしっかりと見つめ、お念仏の教えの本当の有り難さを感じ、一歩一歩、人生をお念仏とともに歩んでいくこと。それこそが私たちに安らぎのある人生を与えてくれるものと信じております。

合掌

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