明顕山 祐天寺

公開日:2024年2月2日  

『怒っても 笑っても 同じ時間を過ごすなら 笑っていたいね』

数年前に放送されていたドラマの好きなシーンがあります。このドラマは、近年は正月にスペシャル番組でも放送されていました。ある小学生の男の子が、同級生の女の子に「よお、ブス。おまえは相変わらずブスだな!」と言っていじめていました。いかにもガキ大将のような、グループのボス的な男の子です。義母より「典型的なトップダウンの集団には、ボスと交渉するのが一番早い」とのアドバイスを受け、直接、いじめないように交渉します。

女の子「どうして私だけいじめるの?」

男の子「ブスだからだよ」

女の子「私なんかしたのかな?」

男の子「お前のブスはむかつくブスなんだよ!」

女の子「なんでむかつくブスなの?」

男の子「本当はブスじゃないからだよ!お母さんが死んじゃってきついのは分かるけど、いつも下向いていて話しかけても返事もしないし!」

男の子は、お母さんが死んでしまって、落ち込んで元気のない女の子を元気付けようと、何度も話しかけたけど、全然立ち直らない女の子が気になって、何とかしたいけどどうにもできずにやきもきして、それでいじめてしまったようです。このドラマのシーンは、小学生の男の子が、気になる女の子の気を引こうとして、つい意地悪してしまうという、素直じゃない感じと男の子の優しさがとても好きなのですが、人の表情は、周りの人にも影響を与えるものですね。

以前、ある女性のお檀家様と境内でお話ししていた時に「年を取るとダメね。言わなきゃいいのに、つい要らないことを言ってしまう。嫌な感じになっていつも反省するのよ。怒っても笑っても同じ時間を過ごすなら笑っていたいのに。」と仰っていました。その方は常に冗談を言って人を笑わせ、周りを楽しい気持ちにさせてくれる、とても明るい方でした。でも、ずっとそうなのではなくて、家では怒ったり、つい嫌味を言ってしまうこともあったそうです。怒っていると冷静な判断力も薄れ、つい自分の主張に偏った考え方をしてしまいます。相手がいれば、その相手も影響を受け、不快な思いをして怒りがこみ上げ、ケンカになってしまいます。笑っている人を見ると、何かほっこりして、優しい気持ちになり、その人から幸せを分けてもらっているような感覚になります。

仏教では、怒ることは「心を害する毒である」と言われています。幸せに向かった行動ではないですね。争いを誘い出す行動で、まさに毒です。逆に笑顔は幸せに向かった行動です。「和顔施(わげんせ)」といって、人に幸せを施す布施の一つで、善い行いとされています。この「怒り」や「笑顔」については、過去の掲示伝道でも何回かテーマにして書かれていますので、ぜひバックナンバーも閲覧していただけたらと思います。

「怒っても 笑っても 同じ時間を過ごすなら 笑っていたいね」

争って常に気を張ってカリカリとして過ごしているより、周りの人と共に笑い合いながら暮らしていきたいですね。

合掌

法務部 佐藤隆常


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