明顕山 祐天寺

公開日:2023年8月18日  

「私は暑い あなたは?」

暑い!一歩外へ出れば汗が止まらなくなります。8月盆も過ぎ、夏休みも後半に差し掛かりましたが、毎日暑い日が続いています。夏が好きな人、苦手な人さまざまいらっしゃいますが、私はどちらかというと後者です。というのも、私は肌が弱いので、暑くて汗をかくと肌が荒れて痒くなるので苦手です。子供の頃は「夏が来なければ良いのに」と思ったこともありました。

 

暑い日が続くと我が家ではちょっとしたケンカが流行します。いわゆる部屋が暑い・寒い問題です。汗だくで外から帰ってくると、オアシスを求めてエアコンの設定温度を下げて風量を上げる私。すると寒いと言ってエアコンを切る家族。暑い私と寒い家族の言い争いが勃発します。こうなると要らないことまで言ってしまい、ヒートアップして余計に暑くなるものの、もう暑いだの寒いだのの問題ではなくなってきます。どこかで収拾をつけなければなりません。

 

この時の私たちはお互いに自分のことしか考えられなくなっています。「私は暑い」「私は寒い」と、その思いにとらわれてしまっているのです。自分が暑いのだから家族も暑いのだろう。ましてや寒いなんて考えられない。

私たちは、自分にとって都合が良いように物事を考えてしまいがちです。自分中心な考え方。きっと気付かないうちにも多々、自分勝手な考えをしてしまっているのでしょう。そのように自分勝手な考えを持っていると、自分中心な偏った考え方になってしまいます。

 

仏教では、まさにこの自己中心的な考えや態度が自らを苦しめる元凶であるとされています。すなわち、自分が、自分が、とむさぼりに溺れていき、思い通りにならないことに怒り腹立ち、正しい解決の仕方がわからず躓いて苦しんでいくのです。その考えには「自分」はいるけど「他のもの」がいないのです。すると、自分の欲求だけが重要視され、他の様々な可能性に思い至らなくなります。しかし、世の中には当然、自分以外のものが無数に存在しています。それぞれが自分と同じように感情があるのですから、自分勝手なことを思っていても、うまくいかないのは当然のことなのです。だから自己中心的な考えや態度は、自らを苦しめる元凶となってしまうのです。人である以上、その感情を完全に無くすことは困難なことでありますが、それでもできるだけ自己中心的な考えにならないように努めていくことが大切です。

 

暑い・寒い問題は、お互いに自分中心でなくなれば収めることができます。一言声を掛けてからエアコンをつけ、風向きを変えて直接あたらないように気を遣う。寒いのであれば一枚薄いものを羽織るなど、相手の状況をお互いに思いやれば良いのです。そもそもは「私は暑い」だけで考えを終わらせず、「あなたは?」まで続けて考えられれば、良かったのです。また「暑い」という感情にこだわらなくなると、日陰にいて風が吹いたときの涼しさを感じることができます。偏った考えではなく、広い視野を持つよう心掛けたいですね。

 

とはいえ、やはり夏は暑い。適度に水分を取り、必要に応じてエアコンを利用したりと熱中症対策をして、残りの暑い夏を越してまいりましょう。

合掌


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