明顕山 祐天寺

公開日:2022年11月2日  

『苦も楽も 心ひとつの おきどころ』

以前お釈迦様のお悟りの地、インドはブッダガヤに建立されました印度山日本寺に駐在僧として現地で暮らしていた時期がございました。日本で生まれ育った私には、インドでの生活はなにもかもが新鮮であり、なかなか慣れないことも多くありました。しかし振り返って考えますと、日本では気付くことが出来なかった、本当に多くのことを教わった場所でありました。

皆さまは普段電車に乗られることはありますでしょうか。通勤や通学、移動等でも利用されている方は多いのではないかと思います。
それでは、その電車が大幅に遅れたらどうでしょう?仕事や約束に影響が出てしまうこともあるでしょう。トラブルは仕方のないことですが、それだけで心の余裕がなくなってしまいます。

インドでは、電車が遅れることが頻繁にあります。それも10分、15分の話ではありません。3時間、6時間、酷いときなど24時間遅れるなんてことも多々あります。その理由は、霧の影響や列車のトラブル、牛が線路を渡っているから通れないなど様々です。インドでの生活を初めた頃の私は、いつ電車が来るのだろうか、この電車はいったいいつ目的地に着くのかなど、不満ばかりを漏らしておりました。

ある時、この日も私が乗っていた電車の到着が大幅に遅れてしまいました。なんとか目的地に辿り着いてチャイ(インドのお茶)を片手にインド人の方にその不満を漏らしておりますと、

『どうしてそんなに怒っているんだい。遅れたことは仕方がないことだよ。それよりまず無事に到着したことを喜ぼうよ。』

この言葉を聞き、不満ばかりを言っていた自分に恥ずかしさを覚えると共に、フッと気持ちが楽になったことをよく覚えております。
『まず無事に到着したことを喜ぼうよ』
少しだけ心のおきどころを変えたことで、こんなにも気持ちが楽になるのだと実感した言葉でした。

日々生活を送っていると、どうしても様々なことに不平不満が出てしまうのが私達です。そんな時は、一度自分自身の心を振り返り、「心のおきどころ」を少し変えてみてはいかがでしょうか?
今日という日は今日しかありません。大切な一日を、今日も心豊かに送っていきたいものです。

合掌
法務部 廣瀨晴彦

 


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