「わたしがさびしいときに ほとけさまはさびしいの」
大正末期から昭和初期にかけて活躍した童謡詩人・金子みすゞの詩の一節です。
「さびしいとき」
わたしがさびしいときに よその人は知らないの
わたしがさびしいときに お友だちはわらうの
わたしがさびしいときに お母さんはやさしいの
わたしがさびしいときに ほとけさまはさびしいの
さびしい思いをしている相手に対して、「あなたに代わってあげたいけど代わることができません。だから、私はあなたの傍にいて一緒にさびしい思いを共有させて欲しい」
相手の立場に立ち、相手の心と自分の心を同じくしていくことを、仏教では「同事(どうじ)」と言い、相手の立場を思いやる心を大切にします。
新型コロナウィルスの感染が再び拡大しており、なかなか終息しません。その影響により、日々のお仕事や生活に苦労をしている方々がたくさんおられます。
「自分自身のことで精一杯で、他の人のことまで思いやる余裕なんてない」
そう思うのは当然のことかもしれません。しかし、こんな時こそ、身近にいる人が抱えている辛さを思いやってはいかがでしょうか。相手の痛みや苦しみを感じられれば、おのずと相手に対する思いやりや労(ねぎら)い、慰(なぐさ)めの言葉が出てくるものです。「お辛いですね」と、相手の苦しみを、自分もいま感じていることを表現する、それだけで、お互いの気持ちを思いやることができるものです。
おだやかな生活に落ち着くのは、いつになるでしょうか。しかし「明けない夜はない」と言われるように、必ず苦しみには終わりがあります。この苦しみを乗り越えた先には、皆でよろこび笑うことができる日が必ずくることを信じ、今日この一日を大切に、仏さまと一緒に生きてゆきましょう。
合掌