明顕山 祐天寺

更新日: 2021年11月17日   公開日:2021年11月16日  

「和顔愛語~にこやかな笑顔と優しい言葉~」

法務部 竹内正俊

 

私は高校3年生の夏休みに、オーストラリアへホームステイに行きました。滞在中は地元の学校見学に行ったり、ハイキングに行ったりと、毎日色々なところへ連れて行ってもらいました。

 

その中でブリスベンにある動物園に行った時のことです。その動物園にはコアラやウォンバットなど、オーストラリア特有の動物がたくさん飼育されていました。なかでもカンガルーは檻の中ではなく広場に放されており、実際に触れることができました。

 

私はカンガルーに触れたり、写真を撮ったりしましたが、近くにはカンガルーに餌をあげている人がいました。おそらく園内で餌が売っており、広場であげられるようになっていたのでしょう。私も買ってくればよかったなと思い、その様子を見ておりました。

 

その時、小さな4歳位の女の子が近づいてきて、カンガルーの餌を私にくれたのです。突然のことで戸惑いましたが、どうやらこの餌をあげていいよと言っているようでした。私は驚きながら、お礼を言って餌をもらい、カンガルーにあげることができました。その時撮った写真を見ると、今でもあの女の子の優しい心を思い出します。

 

見ず知らずの私に餌をくれたこと。たったそれだけのことですが、私にはそれができるでしょうか。相手を喜ばせたいと思う気持ちに胸を打たれ、おかげで生涯忘れることのできないホームステイを体験し、幼い子から国境を越えた優しさを教えてもらいました。思いがけない出来事であったため、少女の顔は覚えていませんが、その心は私の胸に深く刻まれ、生涯忘れることはないでしょう。

 

私達が大切にしている仏説『無量寿経』には、「和顔愛語」が説かれています。にこやかな笑顔と優しい言葉という意味です。現在はコロナウイルスの影響で、様々なことが不便になったり、我慢したりすることが増えていますが、辛い時こそ、笑顔を心がけたいものです。

 

そして、このような非日常の毎日が続く中でも、私もあの子のように、見ず知らずの人にも優しくしてあげられるような心を常に持っていたいと思います。

合掌

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