明顕山 祐天寺



「曲がった松を真っ直ぐに見ることが出来ますか?」

 

これはトンチで有名な一休さんのお話です。ある日、くねくね曲がった松の木を見つけた一休さんは村人を集めて「この松の木を真っ直ぐに見ることができたなら褒美を与える。」と言いました。

すると、お金欲しさに多くの村人で賑わい、首を傾げて見る人や、色んな方角から見る人など、どうにかして真っ直ぐになるように松を見ようとしています。

 

そこに騒ぎを聞きつけて村の子ども達が現れ、1人の子どもがこう言いました。

 

「うわー、すごく曲がった松の木だね!」

 

一休さんはその子どもの言葉を聞いて「その通り!これが真っ直ぐみるということだ」と大いに褒めたそうです。

 

お釈迦様が説かれた悟りを目指して行う「八(はっ)正道(しょうどう)」という8つの修行のひとつに「正(しょう)見(けん)」というものがあります。正見とは、自分中心の誤った見方を捨て、この世の有り様を客観的かつ合理的みるというものです。人はこの世に起こっているものごとを自分の都合でねじ曲げてとらえてしまいがちで、現実をありのままに正しく認識することができません。

村人達も一休さんの「褒美を与える」という言葉に釣られて「褒美が貰えるぐらいなのだから何か裏があるに違いない」と自身の思い込みや都合によって、あるがままの姿で捉えることができなかったわけです。

 

ですので、この掲示板の絵を見て「曲がっている松だな」「絵が下手くそだな」と素直に感じられた人は正しく物事を見られているのかもしれません。

 

人はそれぞれの考え方の違いや思い入れがありますので、完全に物事を客観的に見るということは難しいかもしれません。しかし人を外見で判断しないことや、肩書きや他人の評価に左右されないようにする意識をするだけでも客観的な物の見方に近づくことは可能です。ものの見方や考え方を少し変えて視野を広げるだけで「こんな考え方や見方もあったのか!」と新たな発見に繋がると思います。今一度自身が普段から偏った考え方をしていないかを見つめ直してみてはいかがでしょうか。

合掌

法務部 玉置

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