明顕山 祐天寺

「自分に打ち勝つことが、最も偉大な勝利である」

 

さて、今月の掲示伝道は古代ギリシアの哲学者であるプラトンの名言です。分かってはいてもとても行うことが難しい名言です。私たちの生活の中にも自分に打ち勝とうと思ってもなかなか実行できないことが多くあると思います。娯楽、お酒、食事など、私たちには抑えきれない欲望がたくさんあります。その中でも今一番打ち勝たなければいけないことは外に遊びに行きたいという欲望です。

 

人間は様々な欲望にまみれています。その中で最も根源的な三つの煩悩のことを仏教では「三毒」と言います。「三毒」とは貪(とん)(むさぼり)・瞋(じん)(いかり)・痴(ち)(おろかさ)の三つのことを指します。貪は気に入ったものをほしいと執着すること、瞋は気に入らないことに対して怒ること、痴は誤ったことを真実だと思い込んでしまうなどの愚かさのことをあらわします。気に入っている洋服やバッグを欲しがる、遊びに行けないことに対して怒ってしまう、外に遊びに行ってはいけないのに遊びに行く、これらのことがまさに貪(とん)、瞋(じん)、痴(ち)の煩悩ということになります。この貪(とん)、瞋(じん)、痴(ち)をはじめとする煩悩は抑えることができないのです。

 

では私たちは煩悩に苦しむことしかできないのでしょうか。浄土宗の教えでは、自らを煩悩を抑えることのできない凡夫であると自覚し、煩悩を断つことより阿弥陀様の教えを深く信じて念仏することが大切であるとされています。煩悩は阿弥陀様のいらっしゃる極楽浄土に往生してから煩悩を断つことができるのです。ですから今私たちにできることは阿弥陀様の教えを深く信じて念仏することなのです。つまり極楽浄土に往生することこそが私たちにとっての偉大なる勝利と言えるのではないでしょうか。

 

私たちは煩悩を抑えることができないということを分かった上で外出を自粛しなければなりません。コロナウイルスがいつ終息するのか不安になると思います。しかし、コロナウイルスはいつか必ず終息します。いつかまた堂々と外を歩ける日が来るまでお念仏をお称えする生活を送って参りましょう。

合掌

 祐天寺法務部 井村 真大

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