明顕山 祐天寺

「何をやっても思うようにならない時 上にのびられない時に 根は育つんだから」

 

祐天寺法務部 名木橋大光

この世は苦しみの世界である

 

仏教をお開きになったお釈迦様はこう教えて下さいました。この世が苦しみの世界であるということ、一度立ち止まって考えてみて下さい。楽しいこと、嬉しいこと、幸せだと思うことはもちろんあります。しかしどうでしょうか、そのように感じる時は、つらい・悲しい・苦しいという気持ちを忘れることができている時間なのかもしれません。

 

人間関係、金銭問題、老いや病気、大切な人との別れなど、私たちの苦しみや悲しみは絶えることがありません。また

一時は忘れることができたとしても、決してそれらを避けて通ることもできません。まるで終わりが見えない真っ暗なトンネルを進むように、この世で生きる以上、私たち一人一人がそれぞれの苦しみや悲しみを抱えながら、この人生を生きていかなければならないのです。

 

自分の苦しみや悲しみと向き合うと心が折れそうなことがあります。そう感じる時こそ、自分の支えとなる根の部分をしっかりと育みなさいよと教えてくれる、「何をやっても思うようにならない時 上にのびられない時に 根は育つんだから」

この言葉が頭に浮かびます。いのちの詩人、相田みつをさんのお言葉です。

3月半ばを過ぎた境内には、桜の花が徐々に咲き始めました。満開になったならばどれほど綺麗なことだろうかと、その時を心待ちに過ごす日々であります。

根をしっかりと土にめぐらす植物は、雨風に耐えながら成長していきます。植物を観る時にはどうしても目に見える部分だけに注目をしてしまいますが、地中に育つ根があるからこそ、その根にしっかりと支えられながら成長していくのです。

植物が成長するにはその支えとなる根が必要であるように、私たちにも苦しみの世界を生きる支えとなる根が必要ではないでしょうか。

 

浄土宗の御本尊様である阿弥陀様は、苦しみの世界に生きる私たちをどうにかして救おうと願い、「迷い苦しみのない極楽浄土に生まれたいと心から願って、お念仏を称える者を必ず救うぞ」と約束して下さいました。

お釈迦さまが教えて下さったように、この世が苦しみの世界であることは変わりません。しかし、真っ暗なトンネル二に一筋の光が射すように、その苦しみの先に必ず阿弥陀さまのお救いあるのです。どれほど有難いことでしょうか。お念仏をお称えして生きていくのであれば、今がどれだけ苦しくても、必ず苦しみから離れた極楽浄土にお救い下さるという阿弥陀さまの約束は私の大きな心の支えです。

 

思い通りにならないことばかりの日々ではあります。阿弥陀さまのお約束を心から信じ、お念仏という根をしっかりと育みながら、ともどもにお念仏に支えられた日暮しを送って参りましょう。

 

合掌

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