「鶏と蛇と豚」
私が大好きな歌手、椎名林檎さんが今年の5月に出された曲の題名です。
「鶏・蛇・豚」。この三種の動物は、実は仏教と関わりがあります。
人には煩悩があると言われております。煩悩とは、愛着、執着(しゅうじゃく)のことで、自分にとって離しがたい、捨てがたい感情や感覚のことです。数多くの煩悩の中でも、もっとも根源的なものとされる三つの煩悩を「三毒」と言い、チベット仏教ゲルク派では、その「三毒」それぞれを象徴するのが「鶏・蛇・豚」なのです。
三毒を具体的にご説明致しますと、
「貪欲(とんよく)」。むさぼり、必要以上に求める心。象徴する動物が鶏。
「瞋恚(しんに)」。思うままにならないことへの怒りの心。象徴する動物が蛇。
「愚痴(ぐち)」。道理や真理を分かっていない無知の心。象徴する動物が豚。
仏教は、これらの煩悩を消滅させ、苦しみから離れることを目的としております。しかし、誰しもがこれら煩悩に縛られ、使われております。煩悩によって作られた自分の行いが出てくる。そして、その自分の行いによって、「困った困った」と言っているお互いではないでしょうか。
これが、ありのままの自分です。
「はじめにはわが身の程を信じ、のちに仏の願を信ずるなり」
煩悩にさいなまれ、苦しみから離れることができない自己に気付きます。そんな私をも、阿弥陀さまはお救いくださいます。お念仏を称えて、阿弥陀さまの本願力に乗じて必ず往生するぞ、と信ずる心を持つことができるのです。
合掌
祐天寺法務部 竹村 崇邦