明顕山 祐天寺

「阿弥陀様と親しい関係」

先日、有楽町駅で電車を降りると、清々しい大きな声がその構内に響いていました。

 

「こんばんは!」「お疲れ様です!」「今日も1日お疲れ様でした!」

 

スーツを着た20歳後半くらいの背の高い男性が、すれ違う人に次々と声をかけていたのです。

どうして声をかけて回っているんだろうなと気になったので男性に尋ねると、こう言いました。

 

「挨拶って気持ちがいいじゃないですか。ほとんど声を返してくれる人はいませんけれども・・・

だけど、声をかけたら声が返ってくる。呼びかけたら応えてくれる。これがどれほど有難いか

ということに気付かせてもらえたんです。だから僕も、自分に向けられる声、呼びかけてくれる声

にしっかりと応える姿勢を忘れちゃいけないなと思いました。」

 

その男性が言った「呼びかけたら応えてくれる。これがどれほど有難いことか」という一言。

お念仏のみ教えも、まさにそうじゃないかとハッとされられました。

 

「いかなる者であっても、お念仏をお称えする者を誰1人として

漏らすことなく必ず極楽浄土へ救い取る。お念仏を称えてこい。」

 

これが阿弥陀様のお約束です。阿弥陀様はお念仏を称える私たちの声をいつも聞いて下さっていて、誰の声も聞き漏らさずにそのお念仏の声に必ず応えて下さるのです。応えて下さるというのは、阿弥陀様が私たちのお念仏の声を聞いて、その人を必ず極楽浄土へお救い下さるということです。

 

極楽浄土は私たちの抱える悲しみ・苦しみなど一切無い世界。先立たれた大切な方が皆いらっしゃる世界。この世ではもう二度と叶わない「また会えたね」が叶う世界。私たちがお念仏の日暮らしを送るのならば、命尽きた際には阿弥陀様にその世界にお救い頂けるのです。

 

私たちの生きる世界は決して苦しみのない世界などとは言えません。何時尽きるか分からないこの命を、それぞれの悲しみや苦しみを抱えながら精一杯生きています。そんな私に、「お念仏を称えてこい」「必ず救うぞ」という阿弥陀様自らが呼びかけて下さっている。それだけではありません。このお念仏の声を聞いたのならば、必ず応えて下さるのです。これほど有難いことがあるでしょうか。私たちは何時でも、お念仏によって阿弥陀様と親しい(ちかしい)関係を結ばせて頂いているのです。

 

「阿弥陀仏に そむる心の色にいでば 秋の梢の たぐひならまし」

(意訳:阿弥陀様に染まる私の心の色が見えるとするならば、紅葉していく梢のようでしょう)

 

木々が徐々に色づき始め、真っ赤に染まる紅葉が楽しみな時期になって参りました。紅葉が真っ赤に染まるように、私たちの阿弥陀様・極楽浄土への思いもまた、より一層深めて参りましょう。

祐天寺法務部 名木橋大光

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