明顕山 祐天寺

「花の色は うつりにけりな いたづらに わが身世にふる ながめせしまに」

 

6月に入り、徐々に暑くなって参りました。境内を蜂が大きな羽音をたてて飛んでいる姿や、境内の桜の木に青々と葉が茂っている様子を見ると、いよいよ夏が近づいてきたことを実感します。

 

さて、今月の掲示伝道は小野小町作の小倉百人一首の9番で有名な詩です。ご存知の方も多いのではないでしょうか。意味は、「桜の花はむなしく色あせてしまった。長雨が降っていた間に」という意味です。さらに、小野小町はこの桜の花を自分自身に例えて、「私の容姿はむなしく衰えてしまった。日々の暮らしの中で、もの思いしていた間に。」という意味も込められています。絶世の美人として数多くの伝説を残している小野小町だからこそ創れる儚さを兼ね備えたとても美しい詩となっています。なかなか自分自身を桜のように美しいと断言できる人はいないのではないでしょうか。

 

この詩からも分かるように、あらゆるものはみな平等に枯れ、色あせ、衰え、そして滅していくのです。これは世の中の真理であり、変える事のできないものなのです。仏教をお開きになったお釈迦さまも「この世は無常であり、一定のままの状態の物など無い」とおっしゃっています。もちろんこれは人間も例外ではありません。人間は生まれたその瞬間から死に向かっているのです。老いを止めることも死を止めることもできません。

では我々は死んでいくしかないのでしょうか?

 

浄土宗の本尊である阿弥陀様は西方極楽浄土という一切苦しみのない世界を用意してくださいました。そこへ往生するための方法として、宗祖法然上人は『お念仏』をお示しくださっています。このお念仏を称えることこそが無常の世の中を生きる我々が救われる唯一の行いです。

 

時の流れというのは早いもので、今年も半年が過ぎました。忙しい現代社会の中だからこそ「いつでも」「どこでも」「誰でも」お称えする事のできるお念仏と共に生きて参りましょう。

 

当山では朝の念仏勤行、毎月25日に行われる念仏の日、春秋の彼岸中に行われる別時念仏会など、多くのお念仏を称える機会も用意しております。足を運んでみてはいかがでしょうか?

祐天寺法務部 井村 真大

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