明顕山 祐天寺

「お蔭様の暮らし」

 

「お蔭様をもちまして~」「お蔭様で~」皆様も日常的にお使いになる機会が多くあるかと思います。多くのお力添えや、沢山の親切に対して感謝をお伝えする際によく使われる言葉です。

 

先日、東京大学の入学式で、社会学者であり、ジェンダー研究の第一人者である上野千鶴子氏の祝辞が注目されました。「がんばったら報われるとあなたがたが思えることそのものが、あなたがたの努力の成果ではなく、環境のおかげだったこと忘れないようにしてください。あなたたちが今日がんばったら報われると思えるのは、これまであなたたちの周囲の環境が、あなたたちを励まし、背を押し、手を持ってひきあげ、やりとげたことを評価してほめてくれたからこそです」祝辞の中でこう述べられました。

 

上野氏が述べられた通り、自分の力だけではなく、目に見えない沢山の御蔭様によって今のこの私があるのです。そして沢山の御蔭様によってこれからがあるのだということ忘れてはならないと改めて気付かせて下さいました。

 

「御蔭様」という言葉は、多くの方からの助けやお力添えのことを指して使われることが多いですが、もうひとつ仏様や神様からの加護・御見護りのことも意味することを忘れてはいけません。

 

浄土宗お念仏のみ教えは、「お念仏を称えた者を、苦しみのない極楽浄土に必ず救うぞという阿弥陀様の大きな慈しみのお約束に全てを委ね、お念仏の日暮らしをして参りましょう」というものです。お念仏(南無阿弥陀仏)を称えてこの命を参ったならば、命尽きた際には必ず阿弥陀様が極楽浄土へお救い下さる。そしてそこには先立たれた大切な方々がいらっしゃり、肩を抱き合って再会をさせて頂くことのできる大変有難いみ教えです。

どれほど楽しいことがあっても、老いに憂い、病気に苦しみ、そして死の恐怖に苛まれながら生きていかなければならない、つらく苦しいこの世界であっても、お念仏のみ教えは力強く、今を生きる支えとなります。

 

数え切れないほどのご先祖様・御先達がいらっしゃったからこそ今の自分があり、人として生まれさせて頂き、そしてお念仏のみ教えに出逢うことができました。阿弥陀様が必ず救うぞとお約束下さった御蔭様で、また法然上人が私たちにお念仏のみ教えをお示し下さった御蔭様で、私たちはお念仏とご縁を結ばせて頂くことができているのです。

 

沢山の御蔭様に感謝する気持ちを忘れずに、「御蔭様の暮らし」を精一杯送らせていただきましょう。

祐天寺法務部 名木橋大光

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