明顕山 祐天寺


公開日:2024年12月2日  

「日々 玉を磨く」  法務部 渡邉雨琉

月の初めというのに何かとあわただしい師走でございます。

カレンダーも残すところ1枚となりました。

12月になりますと、浄土宗では伝宗伝戒道場(でんしゅうでんかいどうじょう)というお坊さんになるための最後の修行道場がはじまります。浄土宗僧侶は、大本山増上寺又は総本山知恩院にて開催される伝宗伝戒道場を必ず受けており、この時期になると修行中の様々な思い出が頭を過る。そんな時期でございます。

4年前に道場を終えました私は、当時の辛くも仲間達と支えあい助け合った思い出と共に、

「来年に向けて、せめて残り一ヵ月分、31個の玉を磨こう」という気持ちになります。

これは修行中、増上寺法務部長よりお聞きした藤井猊下(げいか)のお言葉が心に深く残っているからでございます。

知恩院第八十五世、そして増上寺第八十四世でおられました藤井実応大僧正猊下(だいそうじょうげいか)はこのようにお言葉を残されました。

『新年になると、新しく、磨かれていない「新玉(あらたま)」という玉を365個受け取る。

この玉は、お念仏を称(とな)えているとき、そして物事を一生懸命行っているときのみ磨かれる。

眠るときも惰眠(だみん)ではいけない。きちんと眠らなければならない。

私は齢(よわい)80を過ぎているが、365個の磨き切った玉を手にしたことはまだ一回もない

 

しかしながら、また今年(来年も)365個の玉を、ぜひ全部きれいに磨きたいと思います』

 

藤井猊下は、小柄ながらも高座にお座りになられると大変大きな姿に見え、また、猊下を先導する学生が朝寝坊をしている事に気付くと、疲れているのだと静かに通り過ぎて朝のお勤めへ向かわれ、5階相当の場所におられても、エレベーターを待っている間に自らのお身足でひょいと降りてこられるような、おおらかで優しく、大変清らかな猊下でございました。

そんな、素晴らしく尊い存在でおられる藤井猊下でさえ、全ての玉を磨くことは難しいとおっしゃっておられ、

とても私自身が365個の玉を磨き切ることは出来ないのではないかと考えてしまいます。

しかしながら、まずは一つ。そして明日も一つ。と玉を磨き、31日後には晴れやかな気持ちで年始の新玉を受け取れますよう心を込めてお念仏を称え、一日一日を大切に過ごして参りましょう。

合掌

 


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