「見えてるものが 全てじゃないのじゃよ」 目玉おやじ
月日の経つのは早いもので、今年も暑い夏が過ぎ、秋が近づいてきました。最近は、9月になっても厳しい暑さが続いていますが、お彼岸の頃には涼しくなるのでしょうか。
「秋来ぬと目にはさやかに見えねども 風の音にぞおどろかれぬる」『古今和歌集』藤原敏行
秋が来たと、はっきりと目には見えないけれど、爽やかな風の音で秋の到来にはっと気づきましたという意味のお歌です。このように私たちの周りには、目には見えなくても存在しているものがあります。この歌のように季節は見ることはできません。しかし、夏のジリジリとした暑さや、爽やかな秋の風は実際に肌に感じるものです。目に見えないからと、否定してよいものではありません。
宗教とは、神や仏など人間を超えた存在を信じることです。仏教はお釈迦様が説かれてから、2500年以上も受け継がれてきた尊いみ教えです。書家、詩人の相田みつをさんの言葉に次のものがあります。
「そんかとくか 人間のものさし うそかまことか 佛さまのものさし」
人間はどうしても、得の方に走ってしまいます。しかし、損得の判断なので、絶えず変わっていくのです。右往左往しない自己を確立することが大切であり、そのためには損や得を超えた、仏様の「ものさし」を持つことが大切ですと書かれていました。私達は、自分なりの価値観や社会の常識などを自分の「ものさし」として身に付け、そして自分の「ものさし」を間違いのないもの、正しいものと思い込んでいます。
自分だけの都合で物の良し悪しを判断していないでしょうか。人間だけの考え、「ものさし」しか持たないのではなく、ぜひ仏様の「ものさし」を持ちたいものです。
科学の進んだ現代では、見えないものを信じることは難しいかもしれません。しかし、それができた時に、真の心の安らぎがあるのではないでしょうか。
合掌
法務部 竹内正俊