明顕山 祐天寺


公開日:2024年6月15日  

「辛(つら)いという字がある もう少しで幸(しあわ)せになれそうな気がする」

この詩は令和6年4月28日に逝去された、詩人で画家でもある星野富弘氏の『速さの違う時計』という詩画集に掲載されております。
星野さんは中学の体育教諭時代、クラブ活動(器械体操)の指導中、模範演技で誤って頭部から転倒し、頚椎を損傷され首から下の自由を失われました。そのような中でも入院中、口に筆を加えて文や絵を書き始め、その後、美しい草花の絵に詩を添えた作品を創作されました。
花の持つ美しさと力を見出し、それをモチーフにした詩と絵画は、日本をはじめ海外で多くの人の心を勇気づけています。
さて、「辛」と「幸」の文字は、見た目では文字の上の部分に横棒があるかないかの違いだけで似たような文字でありますが、文字の意味としては、「幸」は「つらい」、「幸」は「しあわせ」というように大きな違いがあります。
人間だれしも辛い人生ではなく、幸せな人生を送りたいと願いますが、思いどおりにならないのが私の人生ではないでしょうか。
お釈迦さまはこの世は「一切皆苦(いっさいかいく)」であると言われました。仏教の苦とは、「思うがままにならない」ことであります。
生まれ、老い、病気、死、という根源的なものから、社会的存在として不可避なものまで、私たちは思いどおりにならないのです。
お釈迦様は、この迷い苦しみから私たちを解放する教えを説かれました。しかし煩悩を持つ私たちが実践することは大変難しいものであります。
浄土宗を開かれた法然上人は、現世で悟りを目指す仏教ではなく、南無阿弥陀仏と称えることによって、人としての命終わる時、阿弥陀仏が建立された「極楽浄土」に往き生まれることができる、救いの仏教を私たちにお示し下さいました。
2024年(令和6年)、法然上人が浄土宗を開宗されて850年を迎えました。
この記念すべき年に、新たな気持ちでお念仏の信仰生活を送らせていただき、この命終わる時までお念仏を継続してまいりましょう。
合掌
法務部 脇川公暢

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