明顕山 祐天寺

「お萩食べて 先祖と語らう」

法務部 佐藤隆常

 

今月20日から秋の彼岸が始まります。彼岸は春分・秋分を中日とした、前後七日間にあたり、先立たれた諸霊位に追善の誠をささげる期間です。仏教では迷いの世界をこちら側の岸という意味で「此岸」と呼ぶのに対し、仏様の世界、浄土教においては極楽浄土を彼方の岸という意味で「彼岸」と呼んでいます。

 

極楽浄土とは、阿弥陀如来様という仏様が、すべての生きとし生きるものを救うために、永く厳しい修行を経てお建てになったところです。その極楽浄土は西方に位置するとされています。浄土教を信仰する者にとって、極楽浄土に生まれることは大きな目標とするところです。そして、多くのご先祖さまや大切な方がいらっしゃるところと考えます。

 

『観無量寿経』という経典には、「日想観」といって、夕日を見つめ、その先にある極楽浄土を思い浮かべるという仏道修行が説かれています。太陽が真西に沈む彼岸の時期はその修行に最も適しているとされ、そこからご先祖さまや先立った方々を供養する行事として定着していったようです。

 

また彼岸の時期は、春は牡丹餅、秋はお萩をお供えする慣習があります。その由来は諸説あるようですが、昔は砂糖が高級品であり、砂糖を使ったお菓子をお供えすることでご先祖様に対する感謝を表したようです。牡丹餅とお萩は作る時期で呼び名を変えているようですが、それぞれ牡丹の花、萩の花をイメージしているようです。

 

私たちは両親無くして存在しません。その両親にも、親がいなければ存在しません。そのように何代も遡って、だれか一人でも欠くことがあれば今の私たちは存在しないのです。ですから、何代も前の、名前すらわからないご先祖様であったとしても、その一人一人がとても尊いのです。

 

今回は、その慣習を大切にお萩をお供えし、そしてご先祖さまや先立たれた大切な方を思いながら語らうように供養してほしいという思いでこの言葉を書かせていただきました。

 

阿弥陀如来様やご先祖様が太陽の沈む西側の空からいつも見守ってくださっていると思うと、どこか心が休まるような思いがしてくるものです。その安らかな思いで語るように話しかければ、必ずやその思いは伝わり、聞いてくださることでしょう。またご先祖様も、いつまでも忘れないで思い出してもらえることを、さぞ喜ばれることでしょう。

 

中日にあたる23日は、本堂で秋季彼岸会の法要を行います。法要後にはお供物としてお萩もお渡ししますので、どうぞお供えした後にお召し上がりください。当山の行事はどなたでも参加可能です。お待ちしております。

 

2022年9月23日 14時       秋季彼岸会法要

法要終了後     法話(法務部 竹内正俊上人)

合掌

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